あるかなblog(考察感想用ネタバレ)

感想や考察、プレイログネタバレなど

少女は手を繋いで形を得るのだ

誕生日プレゼントすごーーく素敵なイラストをもらったので、

小話を書きたいとおもって、掲載確認させてもらいました。

rimikaさんありがとう!

 

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つないだ手が温かい。こちらを絶対的に信頼して握り返してくる力強い手。ぐいぐいと引っ張られるようにして虎我はあるく。
季節は秋からもうすぐ冬になる。

街路樹の銀杏が黄色の色どりを添えはじめた。少し空気が冷たくなった季節。この季節を虎我は嫌いじゃない。

黄色は最近のお気に入りの色だし、熊はかわいいと思う。
作品の差し色に使ったりしてSNSの反応は上々だ。
唯兎に黄色い熊のパーカーを作ったら着てくれないだろうか、それとも嫌がるかな。

そんなことを考えて歩く散歩は構想を練るのに最適だ。
今日も学校帰り一直線に虎我の家に突撃しドアを大きな音を立てて唯兎はこう言った。

「お兄様、南山にいこう!」
一限しかなかった虎我はその一言で作業を中断し、妹とともに散歩をすることになったのだ。
南山はこの町にある公園とセットになった小山で30分もしないで高台に出れる子供から老人までに人気の散歩スポットだ。

最近はいろんな森や山にいってもう町内は行きつくした。南山も数度目の来訪だ。
こないだ二人でいった別の公園の中では、「森にあるもので楽しもうコーナー」でみつけた鬼灯細工に唯兎は夢中で来年一緒に作ることを約束した。
そんな細工物に興味があるとは思わなくて驚いたけれど唯兎にとってはいい変化かもしれない。と虎我は思う。

気が付けば空から降ってきた銀杏の葉を唯兎は器用にキャッチしてくるくると回している。そのあとじっと見つめたかと思えばぱくり、と口に運んだ。
虎我は慌てて妹の手を叩き落として口の中から銀杏の葉を取り出す。

「唯! それはダメだ。毒がある」
ほら、捨てて、口濯いで。
少しきつめの口調でいって水筒を飲ませて吐き出させる。

怒られたことにすねたのか、少し泣きそうな顔をした後ぶんぶんと頭をふって、つないでいた手を振りほどいて唯兎は森に駆け出していた。
落ち葉を蹴り上げて一瞬妹の姿が見えなくなる、それにひどく焦燥感を覚えながらも虎我は大事な妹を追いかけた。

心配と愛情を声にのせて名前を呼んで、
甘えたな拗ねた声音を聞きながら

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何をしでかすかわからない破天荒な妹が、
うまくこの社会で生きていけるように。
彼はいつか権力という名前のナイフを握るだろう
それまでの束の間の話